月極駐車場の滞納があった土地明渡等請求事件のモデル事例(当事者と訴訟物検討、内容証明)

貸駐車場の賃借人が4カ月以上滞納した事案

流れ
・依頼者から相談される
・管理会社の担当者と面談する
・現地を確認する
・内容証明を送る
・相手方の家に家庭訪問

依頼者から事件の受任をする(人・意思の確認)

最初は地主さんから相談された。

内容証明と訴状を出して二度目の期日で和解か判決が出る予定のセット商品にした。内容証明代はわたしが負担して、訴状を出すなら実費を依頼者が負担する。予納郵券は7000円くらい。

報酬を伝えて「高いな」とか「内容証明を送るだけだから名前貸して」と言われたら断るつもりだったがそんな話はなかった。

訴訟委任状の参考にしたもの
認定司法書士への道のP20

現地と契約内容の確認(物の確認)

・管理会社の従業員と一緒に現地を確認して振り込まれていないことを確認した。契約書のコピーをもらった。
・車検証コピーで所有者を確認した。所有者は法人B名義と個人D名義。所有権留保の記載はなし。(所有権留保があれば車検証の「所有者」欄がローン会社名義になる)
・神奈川運輸支局の現在登録事項等証明書は取ってない。

契約書には賃料倍額の使用損害金の条項はなく、使えそうなのはよくある14.6%のみだった。

甲が本契約に基づく金銭債務の支払いを遅延したときは、乙に対し、支払期日の翌日から支払済みに至るまで、年14.6%(年365日日割計算)の割合による遅延損害金を支払うものとする。

・現地で自動車を確認した。
・駐車場の面積を出すのにメジャーを持っていき、現地でメジャーを出した状態で写真を撮った。

訴状の物件目録には、駐車場の一部の場合「上記土地のうち、別添図面朱線枠内の部分(約20平方メートル)」と指定するので、現地の写真をメジャー付きで撮影したほうがよいのではと思った。

訴額は?

地主さんに固定資産税の課税明細書を見せてもらい、現地で測定した面積で割って出す。

・目的物の価額は、固定資産評価額をもとに算出する。
・土地については固定資産評価額の2分の1とされている。
・土地明渡訴訟の訴額は目的物の価格の2分の1とされている。

今回の土地明渡の訴額は固定資産評価額を現場の面積で割った額の4分の1になる。

賃料倍額の使用損害金とは?

(使用損害金の条項の例)
賃借人は、本契約が終了した場合において、現実に本件建物の明渡しをしない間は、賃料の倍額に相当する使用損害金を支払う。

明渡しが遅れてる期間は賃料の2倍の金額を払え!という特別研修の後半でやったやつです。

契約書の内容と車検証の名前のまとめ(ここで当事者と訴訟物をどうするか考える)

★管理会社の人からもらった資料
・契約書
・車検証
・保証会社は利用してない
・管理会社によるとCとDは夫婦らしい。
・Dは賃貸借契約の連帯保証人にはなっていない

★法務局で取得したもの
・商業登記簿
・借主の本店建物の不動産登記簿

★契約書
貸主が個人A
借主は株式会社B

★車検証
ハイエースの所有者は株式会社B
コンパクトカーの所有者はD
車検証にディーラーや信販会社の記載はない。

★商業登記簿
株式会社B
代表取締役C
役員は一人だけ

★不動産登記簿
本店所在地の建物と土地はCが所有者。
横浜信用保証(横浜銀行のグループの保証会社)の抵当権が付いてる

★その他
本店所在地の建物はオープンハウスの一戸建で郵便ポストには会社の名札がある。

訴状と内容証明を起案する

訴状を完成させてから内容証明を出せと教えられたので、その通りに進めた。

e内容証明は差出人が1人で、受取人1人に対して1通のe内容証明郵便を送れる。Wordの標準的な設定で記入した場合は1枚に1,584文字記載できる。

1 訴額の算定はどうするか?

土地の明渡の訴額は、結果的に固定資産評価額の4分の1になる。

【参考】
土地明渡訴訟の訴額 = 目的物の価格 × 1/2
目的物の価格(土地の場合) = 固定資産評価額 × 1/2

固定資産評価額は地主の手元に直近のがあればそれを見て、なければ不動産所在地の区役所や市役所で取得する。

駐車場の賃貸借契約書には面積の記載がないので実際に現地で測定した。面積は2m×10m=20㎡くらい。

もしも賃貸借契約書に面積の記載があって現況どおり正確ならばその数字を使うのが良い。

2 当事者を誰にするか?

・原告
個人A

・被告
株式会社B代表取締役社長のC
個人C
個人D

貸主は個人Aで決まり。
借主は株式会社Bだが、自動車はBのハイエース1台とDのコンパクトカー1台が置いてある。

代表取締役社長のCを被告にするために会社法429条1項を使うことにした。

第429条【役員等の第三者に対する損害賠償責任】

① 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

取締役の第三者に対する責任が認められるための要件

① 取締役がその職務を行うについて任務懈怠(義務違反)があったこと
② 取締役に悪意又は重大な過失があったこと
③ 第三者に損害が生じたこと
④ 取締役の任務懈怠と第三者の損害に因果関係があること

「重大な過失」を主張するために評価根拠事実がいる

・原告から再三の催促を受けたにもかかわらず、代表者は何ら誠実な回答も支払い計画の提示もせず、漫然と駐車場を利用させ続け、会社に不法占有という違法行為を継続させた。
・無催告解除特約が存在し、滞納が契約解除に直結することを認識していながら、通知を受け取っても車両の撤去等の措置を一切講じず、原告に賃料相当損害金を拡大させた。

訴訟物はどう考えた?

【訴訟物】
・株式会社Bに対して
賃貸借契約終了に基づく土地明渡請求権
遅延損害金請求権
不法行為に基づく損害賠償請求権

・代表取締役Cに対して
会社法第429条第1項に基づく損害賠償請求権

・Dに対して
所有権に基づく妨害排除請求権
不法行為に基づく損害賠償請求権

検討したけど使わなかった訴訟物

・CとD夫婦の日常の家事に関する債務の連帯責任

民法 第761条【日常の家事に関する債務の連帯責任】
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

内容証明はどうした?

e内容証明は差出人が1人で、受取人1人に対して1通のe内容証明郵便を送れる。

被告を3人としたいが、契約解除だけすれば良いと思い、株式会社Bに対して1通を送ることにした。

文面

私は、貴社に対し、以下の通り通知いたします。

1.契約解除の意思表示
貴社は、通知人と貴社との間で締結された令和年月日付「駐車場賃貸借契約」(以下「本件契約」という)に基づく賃料の支払いを、令和7年9月分より合計4か月間にわたり怠っております。 これに対し、通知人は貴社に対し、これまでも再三にわたり支払いを求めてまいりましたが、本日まで誠意ある支払いがなされておりません。 よって、通知人は貴社に対し、本書面をもって、本件契約を解除いたします。

2.土地の明渡しおよび支払いの請求
本件契約は解除されましたので、貴社は直ちに本件駐車場内の車両を撤去して土地を明け渡し、以下の金額を支払ってください。 ① 未払賃料:金 123,200 円 ② 遅延損害金:上記金額に対する各支払期日の翌日から完済まで年14.6%の割合による金額 ③ 賃料相当損害金:契約解除日の翌日から明渡し完了まで、1か月あたり金35296円の割合による金額

3.代表取締役Cの個人の連帯責任
代表取締役であるC様が、長期間にわたり賃料を滞納させ、通知人に損害を与え続けていることは、取締役としての重大な任務懈怠にあたります。 したがって、通知人は、C様に対し会社法第429条第1項に基づき、貴社と連帯して上記全額の賠償を請求します。

4.Dに対する自動車の収去と土地の明渡しおよび支払いの請求
貴社の本店所在地の建物に居住しているDに対し次の通りに伝えてください。Dは本件土地を占有する正当な権限を有しないので直ちに本件駐車場内の車両を撤去して土地を明け渡し、以下の金額を支払ってください。① 賃料相当損害金:契約解除日の翌日から明渡し完了まで、1か月あたり金15,862円の割合による金額

5.法的措置の予告 本書面到着後7日以内に、上記明渡しの完了およびお支払いがない場合は、直ちに管轄裁判所へ訴訟を提起いたします。判決が出た後は、強制執行の手続き(車両の差押え・代表取締役の所有する自宅の競売請求)を進めます。

【物件目録】 (駐車場の所在地)
【車両目録】 (車種、色、登録番号等)


支払い合計金額一覧は以下の通りです。

滞納元金:123,200円(9月分〜12月分 合計)

お支払い日 遅延損害金合計 お支払い総額
1月10日 4,233円 127,433円
1月11日 4,282円 127,482円
1月12日 4,332円 127,532円
1月13日 4,381円 127,581円
1月14日 4,430円 127,630円
1月15日 4,480円 127,680円
1月16日 4,529円 127,729円
1月17日 4,578円 127,778円

計算の内訳(1月12日の場合)
9月分(9/1起算・滞納132日):1,628円
10月分(10/1起算・滞納102日):1,257円
11月分(11/1起算・滞納71日):875円
12月分(12/1起算・滞納41日):505円
合計:4,332円

訴状はどうやるつもりだった?

第1 請求の趣旨

  1. 被告Bは、原告に対し、別紙物件目録記載の土地を明け渡せ。

  2. 被告Bは、原告に対し、未払賃料として金から完済まで年14.6%の割合による遅延損害金を支払え。

  3. 被告B被告Cは、原告に対し、令和[ ]年[ ]月[ ]日(※解除日の翌日)から本件土地の明渡し済みまで、1か月あたり金35,296円の割合による賃料相当損害金を支払え。

  4. 被告Dは、原告に対し、別紙物件目録記載の土地の上に存在する別紙車両目録記載の自動車を収去して、同土地を明け渡せ。
  5. 被告Dは、原告に対し、令和[ ]年[ ]月[ ]日(※解除日の翌日)から本件土地の明渡し済みまで、1か月あたり金15,862円の割合による賃料相当損害金を支払え。

  6. 訴訟費用は被告の負担とする。

  7. この判決は、仮に執行することができる。
    との判決を求める。

    第2 請求の原因

    1.賃貸借契約の締結
    原告は被告に対し、令和年月日、別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という)を以下の約定で貸し渡した。

    • 賃料:月額 30,800円

    • 支払期日:毎月末日までに翌月分を支払う

    • 目的:駐車場として利用

    • 特約:賃借人が賃料の支払いを1か月分でも怠ったときは、賃貸人は何らの催告を要せず、直ちに本件契約を解除することができるものとする

    2.賃料の滞納
    被告は、令和7年9月分から令和8年1月分まで、合計5か月分の賃料(金154,000円)を支払っていない。

    3.契約の解除
    (1) 本件契約書第〇条には、被告が賃料の支払いを一度でも怠ったときは、原告は何らの催告を要せず本件契約を解除することができる旨の特約(無催告解除特約)がある。
    (2) 被告Bは、令和7年9月分以降、4か月分もの賃料を滞納しており、原告と被告Bとの間の信頼関係は著しく破壊された。
    (3) 被告Bが賃料を滞納することで原告と被告Bとの間の信頼関係は著しく破壊されることを被告Cは知っていた。
    (4) 原告と被告Bとの間の信頼関係は著しく破壊されたことに関して被告Cには重大な過失がある。
    (5) 被告Cの重大な過失の評価根拠事実
    ・原告から再三の催促を受けたにもかかわらず、代表者は何ら誠実な回答も支払い計画の提示もせず、漫然と駐車場を利用させ続け、会社に不法占有という違法行為を継続させた。
    ・無催告解除特約が存在し、滞納が契約解除に直結することを認識していながら、通知を受け取っても車両の撤去等の措置を一切講じず、原告に賃料相当損害金を拡大させた。
    (6) そこで、原告は被告Bに対し、令和[ ]年[ ]月[ ]日付通知書(甲第2号証)をもって、本件契約を解除する旨の意思表示をした。当該通知書は、同月[ ]日、被告に到達した。
    (7) したがって、本件契約は上記到達日をもって適法に解除された。

    4.原告の所有
    原告は、本件土地を所有している。

    5.被告Dによる占有

    被告Dは、本件土地のうち、別紙図面朱線で囲まれた部分(約10平方メートル)に、被告が所有する別紙車両目録記載の自動車(以下「本件車両B」という)を設置して、本件土地を占有している。
    6.被告の権限
    被告は、本件土地を占有する正当な権限を有しない。
    7.損害の発生
    被告Dの無断駐車により、原告は本件土地を駐車場として利用できず、近傍の賃料相場に基づく1か月あたり15,400円相当の損害を被っている。

    原告は、被告Dに対し、不法行為に基づく上記損害金及びこれに対する民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払いを求める。

    8.結語
    よって、原告は被告Bおよび被告Cに対し、賃貸借契約の終了に基づき本件土地の明渡し、未払賃料及び遅延損害金、並びに明渡し完了までの賃料相当損害金の支払いを求める。

    原告は被告Dに対し、所有権に基づき本件土地の明渡し、明渡し完了までの賃料相当損害金及びこれに対する民法所定の割合による遅延損害金の支払いを求める。

    報酬について

    各段階に応じて増えていくモデル。
    建物明渡を例に考えている。
    以下の1/2~2/3くらい?

    賃貸借契約解除通知の発送 50,000円
    (税込55,000円)
    明渡し訴訟の提訴~判決 200,000円
    (税込220,000円)
    明渡しの強制執行申立 100,000円
    (税込110,000円)
    明渡しが実現した場合の報酬 100,000円
    (税込110,000円)
    「セット商品1」
    (解除通知の発送・明渡訴訟の提起から判決or和解までがセットのプラン)
    200,000円
    (税込220,000円)
    「セット商品2」
    (解除通知の発送・明渡訴訟の提起から判決or和解・明渡しの強制執行申立・明渡しの実現までがセットのプラン)
    300,000円
    (税込330,000円)
    賃料を回収した場合の報酬(※) 回収額の20%
    (税込で回収額の22%)
    保証人に対する請求を訴訟に含める場合 50,000円
    (税込55,000円)
    占有移転禁止の仮処分をする場合 100,000円
    (税込110,000円)

    ※賃料を回収した場合の報酬について
    →契約解除通知だけで支払いをしてきた場合は、この報酬はなし

    https://www.g-fudousan.jp/yachintaino/bengoshiyo/

タイトルとURLをコピーしました