マンションの管理費等の滞納を競売で解決する(3つの競売の方法 / 区分所有法59条の競売請求)

【疑問】
マンションの管理費や修繕積立金の滞納が8年でようやく不動産競売になっている事件があるけど、管理組合の総会はどうなってるんだろ。

総戸数が20戸以下だと誰も当事者意識がなくて意思決定が遅れてしまうのかしら?

競売請求や競売申し立ては条件が厳しいの?

【結論】
管理費等の滞納がある区分マンションの競売の方法としては、以下の3種類があります。

・通常の競売申立
・先取特権(区分所有法7条)に基づく競売
・区分所有法59条に基づく競売

滞納期間が長くなる前に通常の競売申立ができるのがベストです。滞納している債務額が少なければ任意売却できる場合もあります。

管理費滞納が多額かつ長期で、他の方法がない場合に競売請求(区分所有法59条に基づく競売)が認められやすいです。

競売請求の申し立てに対する判決が確定した日から6か月以内に競売申立てを行う必要があります。

【参考】
(裁判所)不動産競売事件(担保不動産競売,強制競売)の申立てについて
https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/hudousan_mousitate/index.html

(裁判所)無剰余取消しを回避する方法について
https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/muzyouyokaihi_hudousan/index.html

建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069#Mp-Ch_1-Se_7

民事執行法第45条の通常の競売申立

管理費等の請求して訴訟で勝訴判決や和解をすれば、債務名義に基づいて当該マンションの競売をすることが考えられます。

不動産の買受可能価額が低ければ無剰余取消の可能性があります。

区分所有法7条の先取特権に基づく競売

管理費等を滞納している方は、マンションの住宅ローンも滞納しているケースが多いです。

無剰余取消の可能性があります。

区分所有法59条の競売請求

マンションの管理費滞納があった場合に競売を申し立てて債権回収するには、

①まず競売請求の申し立てをして
②判決確定後に競売申立てを行い
③競売物件が売却されて債権を回収する

という流れとなります。

マンションの義務違反者に対する措置は区分所有法57条から59条に書いてあります。

競売請求が認められるための条件(区分所有法59条)

区分所有法59条の競売手続は、通常の競売手続とは異なる法的性質を持っています。

競売請求が認められるための条件は、以下の3つです。(区分所有法59条)

1.建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為(共同利益背反行為)による
2.区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと
3.他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であること(補充性の要件)

区分所有者が管理費を滞納しており、滞納が多額かつ長期にわたる場合は1と2の条件に当てはまる場合が多いです。他に回収方法がないと認められる事情があれば競売請求が認められやすいです。

他に回収方法がある場合は多額かつ長期でも認められなかったケースがあります。

そのほか注意しておきたいポイント

・共同の利益に反する行為(57条1項)がある場合に、競売請求は総会決議に基づいて訴訟を提起することができる(区分所有法59条1項)
・この決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。(区分所有法59条2項)
・実際の訴訟の提起は、管理者または集会において指定された区分所有者が原告となる(区分所有法59条2項、57条3項)
通常は管理組合の理事長が原告となるでしょう。

・競売請求の訴訟において請求が認められた場合、その判決が確定した日から6か月以内に競売申立てを行う必要がある(区分所有法59条3項)

共同の利益に反する行為の停止等の請求(57条1項)がある場合とは?

区分所有者が6条1項(区分所有者の権利義務等)に規定する行為をした場合に、必要な措置を執ることを請求することができるのが57条1項です。

6条1項
区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

6条2項
区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。

この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。

不動産強制競売事件の申立てを取り下げた場合において執行費用を債務者が負担すべきであるとした事例(東京地決(21部)H29.12.13金判1534-34)

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