無権代理
無権代理の意味と効果
① 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
② 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
無権代理とは「代理人として代理行為をしたものに代理権がないこと」です。
原則:本人に対してその効力を生じない
例外:本人が追認すれば効力を生じる
無権代理であっても本人に有利な場合もあるため、本人に追認の機会が与えられています。
本人が取れる法的手段は「追認」と「追認拒絶」がある
追認した場合、無権代理人がした行為の効果が本人に帰属します。
追認拒絶した場合、無権代理人がした行為の効果が本人に帰属します。追認拒絶後、改めて追認することはできません。
追認または追認拒絶は、相手方または無権代理人にします。無間代理人に対してした場合、相手方がその事実を知るまでは、相手方に対して追認したことを主張することはできません(113条2項)
相手方からその効果を主張することはできます。(大判大 14.12.24)
無権代理人の相手方の権利
相手方には催告権(114条)と取消権(115条)があります。
催告権(114条)
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
催告権は相手方の善意悪意を問いません。本人がその期間内に確答しない場合、追認拒絶したものとみなされます。
取消権(115条)
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
取消権は相手方が善意の場合のみ使えます。
無権代理人の責任
① 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
② 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。
無権代理人は、相手方の選択に従って、履行又は損害賠償責任を負います。
無権代理と相続
この論点は判例で構成されています。
無権代理人が本人を相続した場合
単独相続の場合
⇒当然に有効となる
共同相続の場合
⇒共同相続人全員が共同して追認権を行使しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分についても有効とはなりません。
本人が死亡前に追認拒絶をしていた場合
⇒無権代理行為は有効になりません。
本人が無権代理人を相続した場合
本人は追認拒絶することができます。
相続人である本人に対して無権代理人の責任(117条)の承継を主張できます。
相続人が無権代理人を相続した後に本人を相続した
無権代理人が当然に有効となります。(最判昭63.3.1)