【民法総則】時効とは?(時効総則,時効part1)

時効とは(時効総則)

時効とは一定の事実状態が一定期間継続する場合に、その事実状態を尊重して権利関係を認める制度です。

取得時効と消滅時効があります。

取得時効:一定期間他人の物を占有する者が、その物の権利を取得させる制度
消滅時効:一定期間権利を行使しない場合に、その権利を消滅させる制度

消滅時効の存在理由として有名なのが「権利の上に眠るものは保護に値しない」です。

時効の遡及効(144条)

時効による権利取得、権利消滅の効果は、起算日に遡って権利を取得していたor権利がなかったことになります。(遡及効といいます。)

例えば、Aさんが甲土地を20年間占有して時効取得した場合、Aさんは20年前から甲土地の所有者であったことになります。

時効の援用とは

時効期間が経過しただけでは時効の効果は発生しません。
当事者がこれを「援用」することで時効の効果が発生します。

【判例】
時効の援用によってはじめて権利の得喪が生じます。(最判昭61.3.17)

援用権者が複数いる場合は、そのうちの一人が援用しても、その効果は他の者には及びません。

時効の援用権者は?

時効の援用権者は「時効によって直接利益を受ける者およびその承継人」です。

間接的に利益を受けるにすぎない者は、時効援用できません。

時効の援用権者と対象となる権利

【判例で肯定された例】
・保証人・連帯保証人(145条)、主たる債務
・物上保証人(145条)、被担保債権
・第三取得者(145条)、被担保債権
・詐害行為の受益者、被保全債権

【否定される例】
・一般債権者
・土地上の建物賃借人(取得時効)、建物賃借人のための土地所有権
・後順位抵当権者、先順位抵当権者の被担保債権

時効の援用権を喪失した場合

時効の完成を知らずに債務の承認などをした場合に、
後に時効が完成しても、改めて時効援用することはできません。

【時効援用できなくなる理由】
本人は時効完成を知らないため、時効利益の放棄があったとはいえません。
しかし、相手方はもはや時効援用しないとの期待を抱くので、信義則上、援用することができないとされています。

【例外】
時効の完成を知らずに債務の承認などをした場合でも、再び新たな時効が完成すれば時効援用できます。

時効利益を放棄した場合(146条)

時効利益の放棄とは、時効完成後にする時効の利益を受けない意思表示です。

援用権者は時効利益を放棄すると時効援用できなくなります。

時効利益の放棄の効果は、放棄した者に限ります。
⇒主債務者が時効利益を放棄しても、保証人は主債務の消滅時効を援用できます。(大判大5.12.25)

時効利益の放棄の要件は3つあります。

  1. 時効完成後に放棄の意思表示をする(146条)
  2. 時効にかかる権利について処分能力と処分権限がある
  3. 時効完成を知っている

第146条【時効の利益の放棄】

時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

時効の完成猶予と更新事由

時効の完成猶予:時効の完成が猶予される
更新:あらためて時効が進行する

更新するか、完成猶予なのか

裁判上の請求等
⇒裁判上の請求が終了するまで完成猶予されます。
⇒判決などがあれば時効が更新されます
⇒裁判上の請求が途中で終了したときは、その時から6カ月完成猶予されます。

(裁判外の)催告
催告の時から6カ月完成猶予されます。

協議を行う旨の合意
⇒次の3つから早い時まで完成猶予されます。
合意から1年
合意による協議機関
拒絶通知から6カ月経過

承認
⇒更新されます

未成年者・成年被後見人
⇒行為能力取得、法定代理人の就職から6カ月まで完成猶予されます。

再度の合意で完成猶予の期間が延長するかどうか

協議を行う旨の合意を書面でしたあと、再度協議を行う旨の合意がある場合、通算して5年以内まで効果が延長されます。

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