【民法総則】取得時効まとめ(時効part2)

取得時効とは?

取得時効は一定の要件を満たすと占有者がその物の権利を取得する制度です。

取得時効の要件(162条)

【長期取得・短期取得に共通している要件】
・所有の意思をもって平穏かつ公然に占有を開始する
・他人の物の占有である
・一定期間の占有の継続がある

【一定期間の占有とは】
長期取得時効(162条1項)
・20年間占有する

短期取得時効(162条2項)
・10年間占有する
・占有開始時の善意無過失である
⇒善意は186条で推定されますが、無過失の推定はされません。

時効取得の「他人の物」について

・自己の物も時効取得することができます。
・一筆の土地の一部も時効取得することができます。

「所有の意思」とは?

「所有の意思」とは自主占有を意味します。所有の意思をもって占有することなので、他人の部屋を賃貸している人などは当てはまりません。

所有の意思は客観的事実から外形的に判断されます。

短期の善意無過失はいつからあればよいか

162条2項(短期の取得時効)の善意無過失は占有開始時にあれば足ります。後から悪意になっても問題ありません。

時効援用された場合の効果

・占有者は所有権を原始取得します。
・占有開始時点から所有者であったことになります。
・原所有者の所有権を目的として設定されていた抵当権等は全て消滅します。

【ポイント】
・占有者が占有を奪われた場合に占有回収の訴え(民法200条)で占有を回復すれば、中断はなかったものになります。

【不動産登記法記述の注意点】
⇒所有権を時効取得によって所有権移転した場合、乙区の抵当権は抹消の申請をします。
⇒民法では原始取得ですが、不動産登記では原則通りの共同申請で所有権移転登記をします。

取得時効の対象となる権利(162条,163条)

・所有権
・用益物権(地役権の時効取得が民法283条で定められています。)
・担保物権は質権にのみ認められます。抵当権、先取特権、留置権は時効取得できません。
・債権は「不動産賃借権」を時効取得できます。

時効の起算点

・原則として起算点は固定です。
・占有を承継した場合は、「自己の占有開始時」または「承継した占有の開始時」のいずれかを選択できます。(187条1項)
⇒悪意有過失のAから占有承継した善意無過失のBは、自己の占有のみを主張して10年間で時効取得できます。

参考条文

第162条【所有権の取得時効】
1 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

第163条 【所有権以外の財産権の取得時効】
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。

第186条【占有の態様等に関する推定】
1 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。

2 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。

第187条【占有の承継】

1 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。

2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。

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