【民法総則】消滅時効まとめ

民法における消滅時効とは、一定期間権利が行使されない状態が続いた場合にその権利が消滅することを認める制度です。

自動的に消滅するわけではなく、当事者によって時効が援用されると権利が消滅します。

債権の消滅時効

債権の消滅時効の起算点(166条1項)

○主観的起算点
権利行使できることを知った時から5年間を経過した時

○客観的起算点
権利行使できる時から10年間を経過した時

※同時履行の抗弁権が付託していても消滅時効の進行の妨げとはなりません。
※「権利を行使することができることを知った時」には、債務者を知ったことも含みます

不法行為による損害賠償請求権(724条、724条の2)

不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が「損害及び加害者を知った時から3年」又は「不法行為の時から20年」で消滅時効にかかります。長期間が経過することによる立証の困難性から、本来なら立証できたはずの人を守るための規定です。

第724条【不法行為による損害賠償請求権の消滅時効】
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
①被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
②不法行為の時から20年間行使しないとき。

※「損害を知った時」とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時です(最判平14.1.29)
※「加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況下で、その可能な程度にこれを知った時を意味する(最判昭48.11.16)。

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の場合(724条の2)

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間は、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年」、又は「不法行為の時から20年」です。

第724条の2
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。

判決で確定した権利(169条1項)

第169条【判決で確定した権利の消滅時効】

1 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。

2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

債権以外の消滅時効(166条2項)

所有権

債権所有権以外の財産権は、権利を行使できる時から20年の消滅時効にかかります(166条2項)

所有権は時効により消滅しないことから、所有権に基づく物権的請求権、登記請求権、共有物分割請求権も同様に時効によって消滅しません。

占有権・留置権・先取特権

占有権・留置権・先取特権は消滅時効にかかりません。

これらの権利は、一定の事実や法律関係が存在すれば当然に存在するからです。

客観的起算点の意義

消滅時効の起算点は法律上権利を行使できる時です。(166条1項)

消滅時効の客観的起算点と履行遅滞の比較

【おすすめの判断基準】

  • 消滅時効の起算点は法律上権利を行使できる時
  • 履行遅滞になる時期は遅延損害金を取られても文句をいえない時
債権の種類 消滅時効の起算点 履行遅滞となる時期
確定期限のある債権 期限の到来時 期限の到来時(412条1項)
不確定期限のある債務 期限の到来時 ①期限が到来したことを債務者が知った時(412条2項)
②期限が到来後、債権者から請求を受けた時
期限の定めない債権(原則) 債権成立の時 債権者が履行を請求した時(412条3項)
債務不履行に基づく損害賠償債権(期限の定めない債権(原則) 本来の債務の履行を請求できる時(最判平10.4.24) 債権者が履行を請求した時(412条3項)
停止条件付の債権 条件成就した時 >条件成就後、債権者が履行を請求した時
消費貸借契約に基づく返還請求権
(お金の貸し借り)
催告に関係なく、消費貸借契約の成立から相当期間を経過した時 催告後、相当期間経過した時(591条)
不法行為に基づく損害賠償債務 被害者が損害及び加害者を知った時 不法行為を行った時

【割賦払債務についての重要判例(最判昭42.6.23)】
債務者が割賦金の支払いを怠った場合、
債権者の請求により直ちに残債務を弁済すべき旨の約定があるとき、
その残債務全額についての消滅時効の起算点は、
債権者が残債務全額についての支払いを求める意思表示をした時から全額について進行します(最判昭42.6.23)

第166条【債権等の消滅時効】

1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。

3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

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