代表取締役が同一の二社における不動産売買の利益相反取引
代表取締役が同一のAである甲会社と乙会社において、不動産の売買契約をした場合、利益相反取引に該当します。
代表取締役Aは利益相反取引の取締役会で議決権行使できます。
甲会社と乙会社の両社で利益相反取引には該当するので取締役決議は必要です。
両社ともAは特別利害関係取締役には該当しません(会社法369条2項)から議決権行使可能です。
※利益相反取引なので不動産登記の添付書類として取締役会議事録が必要です。
参考:(補訂版)利益相反行為の登記実務 青山 修 (著) P156
〔補訂版〕利益相反行為の登記実務 青山 修 (著)
関係する条文
第356条【競業及び利益相反取引の制限】
① 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
② 民法第108条の規定は、前項の承認を受けた同項第2号又は第3号の取引については、適用しない。
第369条【取締役会の決議】
① 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
② 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
③ 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
④ 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
⑤ 取締役会の決議に参加した取締役であって第3項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。
決議について「特別の利害関係」を有する取締役は、議決に加わることができません(会社法369条2項)、
その決議事項について、定足数からも除外されます 。
金融機関から代取を決議から外してくれと言われた場合、実際はどうするか
対象不動産に担保権を設定する場合、銀行や信用金庫の担当者が代表取締役を外すように言ってくることがあります。
通常は利益相反取引の決議は満場一致で可決するので、代表取締役が外れても決議に影響はありません。
そのため、会社に伝えて代表取締役に決議から外れてもらうこともあります。
不動産登記における利益相反取引について
不動産登記手続きにおいては、第三者の承諾を証する情報として、利益相反取引を会社が承認したことを証する情報も法務局へ提出します。
利益相反取引の承認機関(承認したことを証する情報)は
・取締役会設置会社の場合は「取締役会の決議(取締役会議事録)」
・取締役会非設置会社の場合は「株主総会の決議(株主総会議事録)」
となります
取締役会非設置会社の場合は、株主総会議事録の代わりに「株主全員の同意書」でもよいです。
取締役会議事録には取締役と監査役が署名するか記名押印します。(会社法第369条3項)
会社法第369条3項
取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
第三者の承諾を証する情報として取締役会議事録は、取締役と監査役が実印を押し、その印鑑証明書を添付する必要があります。
取締役会議事録、株主総会議事録に添付する印鑑証明書の有効期限はありません。(3ヶ月以内に取得したものでなくてもOKです)
添付した印鑑証明書の原本還付をすることはできません。