心裡留保とは「本人の真意とは異なる意思表示を本人が相手に表示すること」です。
本心が勘違いをしている場合は「錯誤」になります。
第93条【心裡留保】
1. 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2. 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
婚姻や養子縁組等の身分法上の法律行為については、当事者の意思を尊重する観点から、93条は適用されません(最判昭23.12.23)。
心裡留保でも契約は有効
心裡留保によってなされた意思表示も原則として有効です(民法93条1項)
原則
意思表示は有効。
例外
表意者の真意でないことにつき相手方が悪意又は有過失の場合、意思表示は無効です。
悪意・有過失の相手方からの善意の第三者(事情を知らない第三者)に対しては、表意者は無効を主張できません。
心裡留保の例
・本心では買うつもりがないのに「買います」と告げる
・本心では物をあげる気持ちがないのに「あげるよ」と言う
・冗談で「その品物を買います」と相手に言う
心裡留保と通謀虚偽表示の違い
通謀虚偽表示(虚偽表示)とは「相手方と通じて虚偽の意思表示をすること」です。
心裡留保は1人で意思表示するもので、通謀虚偽表示は相手と通じている点が異なります。
意思表示のルールまとめ
心裡留保、虚偽表示、錯誤、詐欺、強迫の要点を表にしています。
当事者間 | 第三者との関係 | |
---|---|---|
心裡留保 | 原則は有効。 相手方が事情を知っていたり、知ることができた場合は無効 |
有効。善意の第三者には無効を主張できない |
虚偽表示 | 原則は無効 | 善意の第三者に対しては無効を主張できない |
錯誤 | 基本的に有効 取消できる。 ただし表意者に重大な過失がある場合は、原則として取消せない |
善意無過失の第三者には取消を主張できない |
詐欺 | 基本的に有効 取消できる。 |
善意無過失の第三者には取消を主張できない |
強迫 | 基本的に有効 取消できる。 |
善意無過失の第三者にも取消を主張できる |