宅地や建物の取引をしても、それだけで宅建業になるわけではありません。宅建業になるのは、その取引を「業として行う」場合です。たとえば、自宅を1回売却しただけの人に、宅建業の免許は要りません。
では、どのような場合に「業」といえるのでしょうか。この記事では、「業」の基本的な意味と、実際に使われる判断の要素を整理します。宅建業の4つのキーワードの全体像は宅建業とは?4つのキーワードで理解する、取引の種類は「取引」の種類:自ら・代理・媒介と、宅建業にならない行為で説明しています。
この記事のポイント
- 「業」とは、不特定多数の者を相手に、反復継続して取引を行うこと
- 営利を目的としていることは、「業」の必須の条件ではない
- 取引の対象者・目的・取得経緯・態様・反復継続性を、総合して判断する
- 1回限りの取引でも、「業」と判断されることがある
「業」の基本的な意味
宅建業法でいう「業」は、次の2つの要素でできています。
- 不特定多数の者を相手にすること:相手が広く一般の人であり、あらかじめ限定されていない
- 反復継続して行うこと:繰り返し行っているか、繰り返し行う意思がある
この2つを備えた取引が「業」であり、宅建業にあたります。「不特定多数」と「反復継続」のどちらか一方が欠ければ、原則として「業」とはいえません。
また、利益を得る目的があること(営利性)は、「業」の条件ではないと考えられています。利益を得ない取引であっても、不特定多数を相手に反復継続して行えば、「業」に当たりえます。
「業」かどうかを判断する5つの要素
実際に「業」に当たるかどうかは、1つの基準だけでは決まりません。国土交通省の考え方では、次のような要素を総合して判断するとされています。表の左側が「業」に当たりやすい(事業性が高い)場合、右側が当たりにくい(事業性が低い)場合です。
| 判断要素 | 業に当たりやすい(事業性が高い) | 業に当たりにくい(事業性が低い) |
|---|---|---|
| 取引の対象者 | 広く一般の人を相手にする | 相手が親族や隣地の所有者などに限られる |
| 取引の目的 | 利益を得ることを目的とする | 特定の資金需要を満たすため(相続税の納税資金など) |
| 物件の取得経緯 | 転売するために取得した物件 | 相続した物件や、自分で使う目的で取得した物件 |
| 取引の態様 | 自分で買主を募集して、直接取引する | 宅建業者に代理や媒介を依頼して行う |
| 反復継続性 | 繰り返し取引を行う | 1回限りの取引として行う |
たとえば、転売する目的で買った土地を区画に分けて、広告を出して買主を募り、何度も分譲するような場合は、5つの要素がほぼ左側にそろうため、「業」と判断されやすくなります。反対に、相続した土地を、相続税の納税資金に充てるために、宅建業者に頼んで1回だけ売る場合は、右側の要素が多く、「業」とは判断されにくくなります。
5つの要素は、1つでも右側に当てはまれば業に当たらない、というわけではありません。あくまで総合的な判断になります。
「1回限り」でも業になることがある
「反復継続」というと、何度も取引することだと考えがちですが、1回の取引でも「業」と判断される場合があります。たとえば、大きな土地を多数の区画に分け、広く一般に向けて販売するような場合は、見た目は1つの事業でも、実質的に反復継続して取引を行うものと考えられます。
逆に、同じ人が何度か取引をしていても、相手が特定の親族に限られているような場合は、「不特定多数」とはいえず、「業」に当たりにくくなります。回数だけで機械的に決まるものではない点に注意してください。
具体例でチェック
| 行為 | 業に当たるか | 理由 |
|---|---|---|
| 転売目的で取得した土地を区画割りし、広告を出して一般に繰り返し分譲する | 当たる可能性が高い | 対象者が不特定多数で、目的・態様・反復性のいずれも事業性が高い |
| 相続した土地を、相続税の納税資金のため宅建業者に媒介を頼んで1回売る | 当たる可能性は低い | 目的・取得経緯・態様・反復性のいずれも事業性が低い |
| 自分の土地を、親族に限って何度かに分けて売る | 当たる可能性は低い | 対象者が限定されている |
| 自分で買主を募集し、利益目的で土地の売買を毎年繰り返す | 当たる可能性が高い | 不特定多数を相手に、反復継続している |
試験でのポイント
- 「業」は、不特定多数を相手に反復継続して取引を行うこと。まずこの定義を正確に覚えましょう。
- 営利を目的とすることは必須ではありません。「利益を目的としなければ宅建業に当たらない」という記述は誤りです。
- 1回限りの取引でも、多数の区画を一般に分譲するような場合は「業」に当たりえます。
- 「業」に当たるのに免許を受けていない場合は、無免許営業になります。ルールは無免許営業・名義貸しの禁止で学びます。
確認問題
次の記述が正しければ○、誤りなら×で答えてみましょう。
宅建業法でいう「業」とは、不特定多数の者を相手に、反復継続して取引を行うことをいう。(答えを見る)
○。これが「業」の基本的な定義です。
利益を得る目的がない場合は、宅建業の「業」に当たることはない。(答えを見る)
×。営利性は「業」の必須の条件ではありません。
取引が1回だけであれば、どのような場合でも「業」には当たらない。(答えを見る)
×。多数の区画を一般に向けて分譲するように、1回の取引でも「業」と判断される場合があります。
取引の相手が親族に限られているときは、「業」に当たると判断されにくい。(答えを見る)
○。取引の対象者が限定されている場合は、事業性が低いと判断されやすくなります。
まとめ
- 「業」とは、不特定多数を相手に反復継続して取引を行うこと
- 営利目的は必須の条件ではない
- 対象者・目的・取得経緯・態様・反復継続性を総合して判断する
- 1回限りでも「業」に当たることがある
これで、宅建業の4つのキーワード「宅地」「建物」「取引」「業」がそろいました。次は、宅建業の定義に当てはまっても宅建業法が適用されない例外を、宅建業法が適用されない例外(国・地方公共団体など)で確認しましょう。全体の流れは宅建業者になる:定義・免許・事務所・宅建士から確認できます。
最終更新日:○○○○年○月○日

