宅建業者には、事務所に関する決まりがたくさんあります。専任の宅建士を置く、標識を掲げる、帳簿を備えるなど、どれも「事務所」を単位に定められています。さらに、免許を出すのが国土交通大臣か都道府県知事かも、事務所がどこにあるかで決まります。
ここでいう「事務所」は、日常で使う「オフィス」とは少し違い、宅建業法で意味が決まっています。この記事では、どんな場所が事務所に当たるのかを整理します。宅建業の定義は宅建業とは?4つのキーワードで理解する(宅地・建物・取引・業)で説明しています。
この記事のポイント
- 事務所は、「本店」「宅建業を営む支店」「契約締結権限のある使用人を置く継続的な施設」の3つ
- 本店は、そこで宅建業を営んでいなくても事務所になる
- 支店は、宅建業を営むものだけが事務所になる
- 事務所に当たるかどうかで、専任の宅建士の設置や免許権者などが変わる
宅建業法でいう「事務所」の3つの種類
宅建業法で事務所とされるのは、次の3つです。
- 本店(主たる事務所):宅建業を営んでいるかどうかにかかわらず、事務所になる。
- 支店:宅建業を営む支店だけが、事務所になる。
- 上記以外の場所で、継続的に業務を行うことができる施設を持ち、かつ、宅建業の契約を締結する権限を持つ使用人を置いているもの。
つまり、事務所かどうかは名前ではなく、実態で決まります。「営業所」「出張所」といった名称でも、3の条件を満たせば事務所です。
①本店は常に事務所
本店は、宅建業を営んでいなくても、事務所として扱われます。たとえば、不動産会社が、本店では経理や総務だけを行い、宅建業は支店でのみ行っている場合でも、本店は事務所に当たります。
本店は会社全体を統括する場所であり、支店で行われる宅建業についても責任を負う立場にあるためです。
②支店は、宅建業を営むものだけ
支店は、宅建業を営んでいる場合に限って、事務所に当たります。宅建業とは関係のない他の事業だけを行っている支店は、事務所ではありません。
本店と支店で結論が逆になる点は、試験でよく狙われるところです。本店は「営んでいなくても事務所」、支店は「営んでいなければ事務所でない」と覚えましょう。
③継続的な施設で、契約締結権限のある使用人を置く場所
本店でも支店でもない場所は、次の2つの条件を両方満たす場合に、事務所になります。
- 継続的に業務を行うことができる施設を有していること
- 宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置いていること
契約締結権限のある使用人とは、たとえば、契約について会社を代表して決定できる支店長や営業所長のような立場の人です。単なる事務員や営業担当者でない点に注意してください。
事務所に当たるかどうかの判断の流れ
- その場所は本店か? → はいなら事務所。
- 支店か? → はいなら、宅建業を営んでいれば事務所、営んでいなければ事務所ではない。
- どちらでもない場合、継続的に業務を行う施設があり、契約締結権限のある使用人を置いているか? → 両方満たせば事務所。満たさなければ事務所ではない。
具体例でチェック
| 場所 | 事務所か | 理由 |
|---|---|---|
| 本店(宅建業は支店でのみ営んでいる) | 事務所 | 本店は宅建業を営んでいなくても事務所 |
| 宅建業を営んでいる支店 | 事務所 | 宅建業を営む支店 |
| 宅建業を営まず、別の事業だけをしている支店 | 事務所でない | 支店は宅建業を営む場合だけ事務所 |
| 営業所という名称で、継続的な施設があり、契約締結権限のある使用人を置く | 事務所 | 名称にかかわらず③の条件を満たす |
| 継続的な施設はあるが、契約締結権限のある使用人がいない出張所 | 事務所でない | 契約締結権限のある使用人がいない |
| 分譲の販売のために一時的に設ける案内所 | 一般に事務所でない | 継続的な施設とはいえないことが多い(事務所以外の場所) |
案内所のような、事務所以外の場所には、別のルールがあります。案内所・契約場所の規制:標識と専任宅建士で確認しましょう。
事務所の数や場所が関係するルール
事務所に当たるかどうかは、次のようなルールに直結します。
- 免許権者:事務所が1つの都道府県内だけなら都道府県知事、2つ以上の都道府県にあるなら国土交通大臣。詳しくは大臣免許と知事免許の違い。
- 専任の宅建士:事務所ごとに、一定の割合で置く必要がある。詳しくは専任の宅建士の設置義務(5人に1人以上)。
- 営業保証金:事務所の数に応じて、供託する金額が変わる。詳しくは営業保証金の額と供託の方法。
- 標識や帳簿などの備え付け:事務所ごとに必要。詳しくは事務所に備えるもの:標識・帳簿・報酬額表など。
試験でのポイント
- 本店は、宅建業を営んでいなくても事務所です。
- 支店は、宅建業を営むものだけが事務所です。
- 名称(営業所、出張所など)ではなく、継続的な施設と契約締結権限のある使用人の有無で判断します。
- 案内所などの事務所以外の場所は、事務所とは別のルールがあります。
確認問題
次の記述が正しければ○、誤りなら×で答えてみましょう。
本店では宅建業を営んでおらず、支店でのみ宅建業を営んでいる場合、本店は事務所に当たらない。(答えを見る)
×。本店は、宅建業を営んでいなくても事務所に当たります。
宅建業を営んでいない支店は、事務所に当たる。(答えを見る)
×。支店は、宅建業を営むものだけが事務所に当たります。
本店・支店以外の場所でも、継続的に業務を行う施設があり、契約締結権限のある使用人を置いていれば、事務所に当たる。(答えを見る)
○。名称にかかわらず、実態が条件を満たせば事務所です。
1つの会社が、2つの都道府県に事務所を置く場合、免許は国土交通大臣から受ける。(答えを見る)
○。事務所が2つ以上の都道府県にある場合の免許権者は、国土交通大臣です。
まとめ
- 事務所は、本店・宅建業を営む支店・契約締結権限のある使用人を置く継続的な施設
- 本店は宅建業を営まなくても事務所、支店は営む場合だけ事務所
- 事務所の判断は、名称ではなく実態で行う
- 事務所かどうかは、免許権者や専任の宅建士などのルールに関わる
次は、事務所に備えなければならないものを事務所に備えるもの:標識・帳簿・報酬額表などで見ていきましょう。全体の流れは宅建業者になる:定義・免許・事務所・宅建士から確認できます。

