宅建業者は、事務所に専任の宅建士を置くだけでなく、いくつかのものを備え付けたり、掲示したりしなければなりません。取引の相手に対して、業者が誰であるかや、報酬の上限を知らせたり、取引の記録を残して、あとから確認できるようにするための決まりです。
この記事では、事務所に備える4つのもの、標識・報酬額の掲示・帳簿・従業者名簿を整理します。事務所の意味は「事務所」とは?本店・支店・継続的業務を行う場所で説明しています。
この記事のポイント
- 事務所に備えるものは、標識・報酬額の掲示・帳簿・従業者名簿の4つ
- 標識は事務所だけでなく、案内所などにも必要。報酬額の掲示、帳簿、従業者名簿は事務所のみ
- 帳簿は取引のあったつど記載し、閉鎖後5年間保存(自ら売主となる新築住宅は10年間)
- 従業者名簿は、取引の関係者の請求があれば閲覧させる
事務所に備えるもの:一覧
| 備えるもの | 根拠 | どこに必要か | 要点 |
|---|---|---|---|
| 標識 | 50条1項 | 事務所と、案内所など業務を行う一定の場所 | 公衆の見やすい場所に掲示する |
| 報酬額の掲示 | 46条4項 | 事務所 | 国土交通大臣が定めた報酬額を、公衆の見やすい場所に掲示する |
| 帳簿 | 49条 | 事務所 | 取引のあったつど記載し、閉鎖後5年間保存する |
| 従業者名簿 | 48条3項 | 事務所 | 関係者の請求があれば閲覧させ、最終の記載から10年間保存する |
専任の宅建士の設置も、事務所ごとに必要なルールです。専任の宅建士の設置義務(5人に1人以上)で詳しく扱います。
①標識
標識は、その事務所が宅建業者のものであることを、取引の相手に知らせるための掲示です。事務所ごとに、公衆の見やすい場所に掲げなければなりません。
事務所の標識には、次のような事項を記載します。
- 免許証番号
- 免許の有効期間
- 商号または名称
- 代表者の氏名
- その事務所に置かれている専任の宅建士の氏名
標識は、事務所だけでなく、案内所など、事務所以外で業務を行う一定の場所にも掲示が必要です。案内所の標識については、案内所・契約場所の規制:標識と専任宅建士で確認します。
②報酬額の掲示
宅建業者は、国土交通大臣が定めた報酬の額を、事務所ごとに、公衆の見やすい場所に掲示しなければなりません。依頼者が、請求される報酬の上限を事前に確認できるようにするためです。報酬額の具体的な内容は、報酬規制の基本:誰が・誰から・いくらまでで扱います。
報酬額の掲示は事務所だけに必要で、案内所などには必要ありません。標識との違いとして、試験でよく問われるところです。
③帳簿
宅建業者は、事務所ごとに、業務に関する事項を記載した帳簿を備え、取引のあったつど記載しなければなりません。帳簿には、取引のあった年月日、取引した宅地や建物の所在と面積、取引の態様、当事者の氏名や住所、報酬の額などを記載します。
帳簿は、各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後5年間保存します。ただし、宅建業者が自ら売主となる新築住宅の取引に関する帳簿は、10年間保存が必要です。
④従業者名簿
宅建業者は、事務所ごとに従業者名簿を備えなければなりません。従業者名簿には、従業者の氏名、従業者証明書の番号、生年月日、主たる職務の内容、宅建士かどうか、その事務所の従業者になった日と、従業者でなくなった日などを記載します。
従業者名簿は、取引の関係者から請求があったときは、閲覧させる義務があります。最終の記載をした日から10年間、保存しておく必要があります。従業者証明書と合わせて、従業者証明書と従業者名簿で詳しく学びます。
標識と報酬額の掲示の違い
場所の違いは、混同しやすいところです。次のように整理しましょう。
| 事務所 | 案内所など(事務所以外) | |
|---|---|---|
| 標識 | 必要 | 必要(一定の場所) |
| 報酬額の掲示 | 必要 | 不要 |
| 帳簿 | 必要 | 不要 |
| 従業者名簿 | 必要 | 不要 |
試験でのポイント
- 報酬額の掲示、帳簿、従業者名簿は、事務所のみで必要です。案内所には不要です。
- 標識は、事務所と案内所など、業務を行う一定の場所に必要です。
- 帳簿の保存期間は、閉鎖後5年間。ただし、自ら売主となる新築住宅の取引に関するものは10年間です。
- 従業者名簿の保存期間は、最終の記載をした日から10年間です。帳簿の保存期間と混同しないようにしましょう。
- 従業者名簿は、取引の関係者からの請求があれば閲覧させる必要があります。
確認問題
次の記述が正しければ○、誤りなら×で答えてみましょう。
報酬額の掲示は、事務所だけでなく、案内所にも掲示しなければならない。(答えを見る)
×。報酬額の掲示は、事務所だけに必要です。
標識は、事務所のほか、案内所など業務を行う一定の場所にも掲示する必要がある。(答えを見る)
○。標識は、事務所以外の一定の場所にも必要です。
宅建業者が自ら売主となる新築住宅の取引に関する帳簿は、閉鎖後10年間保存しなければならない。(答えを見る)
○。帳簿は原則5年間ですが、自ら売主となる新築住宅の取引に関するものは10年間です。
従業者名簿は、取引の関係者から請求があったときは、閲覧させなければならない。(答えを見る)
○。従業者名簿には、関係者への閲覧の義務があります。
まとめ
- 事務所に備えるものは、標識・報酬額の掲示・帳簿・従業者名簿
- 標識は案内所などにも必要。それ以外は事務所のみ
- 帳簿は閉鎖後5年間(自ら売主の新築住宅は10年間)、従業者名簿は最終の記載から10年間保存
次は、事務所ごとに置かなければならない専任の宅建士について、専任の宅建士の設置義務(5人に1人以上)で学びましょう。全体の流れは宅建業者になる:定義・免許・事務所・宅建士から確認できます。

